「キリスト教は邪教です!」現代語訳「アンチクリスト」F・W・ニーチェ著

「キリスト教は邪教です!」
現代語訳
「アンチクリスト」
F・W・ニーチェ著
訳:適菜収(てきなおさむ)氏

私は日本に生まれ、日本の文化の中で育ってきました。また、宗教、特にキリスト教に関しては無知といってよいと思いますので、本著この著書におけるニーチェの叫びを真の意味を理解できたのか、危惧されます。
ただ間違いなくいえることは、ニーチェの圧倒的なエネルギーを感じた、ということです。その具体的な叫びを本著から引用致します。

唯一の神、唯一の神の子という発想は、しょせん下層民の恨みつらみから発生したタワゴトに過ぎません

言ってみればキリスト教は、「人間のダメな部分」の集合体なのですね。

「自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたたちにどんな報いがあろうか。税金取りでも、同じことをしているではないか。自分の兄弟にだけあいさつしたところで、優れたことをしたと言えるのだろうか。税金取りでさえ、同じことをしているではないか」(マタイ伝5の46)

これがキリスト教の愛の原理です。つまりこういう愛は、最後に見返りを受けることを願っているのです。

引用したい箇所はこれだけにとどまりませんが、誤解すべきでないことは、ニーチェがイエスではなく、キリスト教に痛罵を浴びせているということです。「キリスト教会が、自分たちの宣伝に都合がいいように、イエスをどんどん変えたからです」とニーチェは書いています。

本著を読みますと、キリスト教の本質が見えるような気がしますが、冒頭でも書きましたように、キリスト教文化圏で育っていない私にとっては、ニーチェの叫びがどれほど重い意味があるのか、肌で実感できないことが非常に残念でなりません。
ところで、訳者の適菜収氏は「訳者から-本来の神の姿をゆがめたキリスト教」で「ニーチェも言うようにキリスト教は戦争を必要とする宗教です。日米戦争、パレスチナ問題、ベトナム戦争、イラク戦争などにおける、アメリカをはじとするキリスト教原理主義国の行動パターンも、本書をお読みになれば、すっきり腑に落ちることと思います」と書かれておられます。確かにキリスト教原理主義国が戦争が起こす要因の根の部分は理解できますが、他の要素も多分にあるように思います。例えば、キリスト教原理主義国が持つ独特の被害者妄想などです。もちろんキリスト教が戦争を必要とする宗教である、ということが起因しているとは思いますが、キリスト教を信仰している人々は、実はキリスト教の不自然さに潜在的に不安・居心地の悪さを抱えていて、その不安を他国へも押し付けてしまう、という心理が働いているのかもしれません。この点については、さらに研究を進めていきたいと個人的には考えております。

余談ですが、レヴィ・ストロースは「600年おきに質の悪い宗教が誕生していった」とおっしゃっておりますが、本書を読むと、茫漠とではありますが、理解できるような気が致しました。

最後に:読みやすく現代語訳してくださった適菜収氏には、衷心よりお礼を申し上げます。また、この刺激的な本に対するキリスト教を信仰なさっている方々の感想を、是非聞きたいと思っております。

草壁丈二

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)